本コラムでは、著者の経験に基づいた「モデルベース開発のメリットと電子回路設計のフロントローディング化」について記載してまいります。もちろん、お客様のからご提供された機密情報は除外しての内容となりますが、できるだけ、読者の皆様に有用な内容を盛り込んで執筆いたしますので、ぜひ継続してご購読いただけますと幸甚です。
Googleが取り組み始めたオープンソースPDK
まず、米国を代表するIT企業GAFAの一角であるGoogleにまつわるモデルの話から始めます。弊社とお付き合いのあるお客様でも、「Googleとモーデック、何の関係があるの?」と疑問が沸いてしまうのではないかと思います。実は、2023年に、「オープンソースPDKによる将来の展望とgoogleの取り組み」というタイトルで、GoogleのEuphrosine氏と弊社の木村が無償ウェビナー(図1.1)
https://www.modech.com/seminar/free18th_08-30-2/
を実施しております。
図1.1 第18回無償ウェビナー オープンソースPDKによる将来の展望とGoogleの取り組み
Googleと弊社のお付き合いの中で面白いトピックがいくつかあるのですが、ここでは、その内容については割愛させていただきます。ただ、Googleも着目し始めたOpen PDK中のデバイスモデル、何故、今の時代にモデルが注目されるようになってきたのか?そのことについては、「オープン デザイン支援の最後のピース:Google の取り組みの変遷」という招待論文などを通じて、既にGoogleがオープンにしています。その招待論文は、インターネット上から入手できますので、ご興味のある方は、ぜひGoogleで検索してみてください。
著者自身は、招待論文のタイトルにある「最後のピース」という響きが重要なことを指しているようで結構気に入っています。なぜなら、そのピースの中に、我々が取り組んできたPDK(Process Design Kit)のSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)モデルが含まれているからです(図1.2)。
図1.2 招待論文「オープン デザイン支援の最後のピース:Google の取り組みの変遷」からの引用
Googleが目指す半導体設計とハードウェア開発の未来
ご存じのように、Googleは検索エンジンから始まったソフトウェアを主体としたIT企業です。しかし、ソフトウェアだけでは、そのうち差別化が難しくなるのではないか、エヌビディアのような半導体企業が世の中を席巻する時代が来るのではないか、というようなことを予見していたのかもしれません。つまり、ソフトウェアだけでなくハードウェアの技術を有することが重要と考え、ハードウェアを代表する半導体を手掛けるには、どういった技術が必要なのかを調査し始めたのかもしれません。
半導体の世界では当たり前のことですが、半導体を設計するには、PDKなるものがないと設計できない、その中には、どうもSPICEモデルというものがある、そういったものが「最後のピース」という表現に繋がったように推測しています。「最後のピース」を伴い、オープン デザインを通じて、半導体設計エンジニア数を増やしていくことで、ハードウェア技術の向上を促進していきたい、そういう思いを感じています。モーデックは、「最後のピース」であるモデルの価値を高めて、エレクトロニクス設計分野のゲームチェンジャーの一角を担うべくこれからも精進していく所存です。
ひとまず、第1話はここまで。