Vol.5 BCPな電気設計を考える

第12回 エンジニア魂を入れる【最終回】

プロフェッショナルな思考をしよう

 EOL/BCPを制御する主たる部門はどこなのか。
 皆さんはどのように考えられていますか?
 皆さんは、エンジニア=設計のプロフェッショナルです。
 TV番組に『プロフェッショナルとは』と最後に問いかける場面があります。
 皆さんはどのように応えますか?
 心に留まった言葉があります

  • 既存にとらわれず、一歩踏み込む
  • 弱さも磨けば個性になる

            NHK 『プロフェッショナル 仕事の流儀』より

 プロフェッショナルは技だけでなく、常日頃から高い意識のもと活動をするのでしょう。
設計部門は商品企画から製造、市場での課題解決にまで入り込みます。
 これらに加えて、商品を構成する部品がなくなるという事態への対応もします。
 長い時間をかけて作り込んできた品質が崩れないように、十分な設計配慮と検証が必要で、常にフラストレーションを抱えています。
 これらに耐えて楽しんでいる皆さんはプロフェッショナルそのものです。
 エンジニアの心が自由になるには、日頃から、多方面に配慮できる余裕が必要です。
 『いまでもいっぱいなのに、さらに配慮せよって無理!』と聞こえてきそうです。
 自己努力はもちろんですが、部門を超えて理解しあい、協力体制と情報共有にイニアシチブをとってこそ、リスクヘッジを先行させさらに、プレゼンスを上げる好循環をうみます。

一歩踏み込む流儀

 回路が複雑になるほど、部品が特殊になるほどいかに早く、正確に初動を開始するかがモノを言います。
 商品機能を実現するために必要な部品は、代替部品への置き換えにより回路や基板設計に影響することがあります。部品の特殊性、変化点の大きさ、機能への影響などから検証も多岐にわたるでしょう。調達など関連部門も専用部品になるほど困難さを理解しており、普段から部品の確保には心血を注いでいると思います。が、自然災害など制御できない事態になりBCPに影響を及ぼすことが目前に迫ったときは、それは大変です。
 不測の事態だからしょうがない・・とはなりません。
 組織を挙げて即応するしかないのですが、エンジニアとして役割毎に普段からの取り組みもプレゼンスを上げるチャンスでもあります

  1. 有効な検証ツールの準備や態勢の構築
       シミュレーションなら分析力の向上、デバイスモデルの準備など
  2. 設計ナレッジの構築
       設計の考え方、設計根拠の整理、ディジタルデータ化
  3. 共通管理システムの構築
       出図データの標準化、共通言語での管理・運用

 どれも、普段の設計活動の延長線上で実現できることではないでしょうか。
 商品開発の業務に加え一歩踏み込むだけでいいのです。
 著名人の心にとどまったプロフェッショナルな言葉があります。
 
  誰もが思いつきそうな事を人より鼻の差ぐらい先を見越して実現すればいいんだ
            (志村けんさんの言葉より)
 それぞれの個性、流儀があるでしょうね。

エンジニア魂が経営プレゼンスを上げる

 経営視点で物事を見るのは大事なことです。
 設計のプロフェッショナルとして、経営視点で仕事をするというのはどういうことなのでしょうか。人事評価を数字で表現するために経営数字としてどれだけ貢献したかというのがあります。設計そのものを経営数字への置き換えは難しいので、どれだけQCDに効果を与えたかで数字化するにしても、釈然としない方もおられるかもしれません。人事評価は『みんなが幸せになる』という究極の目的ではないからだと思います。
 私はエンジニア魂という言葉が好きです。どのような困難にも立ち向かい諦めない。
 一歩踏み込んで、ディジタルデータを使いこなし組織協働まで持ちあげるとともに、究極の目的を持つことで、数値化されたQCDに経営的な視点が加わり、エンジニア魂のこもった経営活動・数字に置き換わると思います。
 人それぞれの流儀というものがあるとも思います。なによりもひとりひとりの個性を生かしプロフェッショナルならではの先見性をもつことで、先手を打っていく。
 先手はデータ化され、滞りのないSCMに繋げる。このような考えが、究極の目的を達成するための手段である経営上のプレゼンス向上に発展するのではないでしょうか。
 本コラムはこれを持ってクローズします。また、違った視点で皆様にお会いできることを楽しみにしています。 
 最後までお読みいただきありがとうございました。