パワーデバイスの系統的モデリング手法の提案

2022.05.30

モーデックからの提案

EMCを抑制するためのモデルベースデザイン(MBD)のため、モーデックは、新たに系統的なパワーデバイスモデリング手法を提案します。

系統的なパワーデバイスモデリング手法

パワーデバイスは高いdi/dt等の特徴により、特性が測定された環境に大きく影響されます。
モーデックは、データシートや測定結果を元にしたモデリング技術をべースに、
次の特徴を持つモデリング手法により、パワーデバイスの持つ課題を解決します。

  • モデリングされたベンチボード上での過渡特性測定。
  • 測定や物理解析によるパッケージ等、トランジスタ本体以外の部分のLCR抽出。
  • 適正な負荷条件、適正な電源の使用。
  • 収束性良く、高速なSPICEシミュレーションを実現するモーデック独自の等価回路ベースのトランジスタモデル。MOS、IGBT、SiC等のトランジスタ特性を忠実に再現。
  • 完全にモデル化された測定環境の中で、対象のデバイス動作波形をシミュレーションし、デバイス本体をモデリング。

特性改善例

本手法でモデリングしたIGBT例を示します。

モデリング実行結果その1(RG=16Ω)

ゲートドライバとIGBTの間の、スイッチング特性調整用ゲート抵抗(RG)を16Ωに設定しています。参考モデルに対して弊社モデルは実測波形によく一致しています。

モデリング実行結果その2(RG=27Ω)

次に、同じSPICEモデルを使って、ゲート抵抗を27Ωにしてみました。参考モデルは誤差が拡大しているのに対し、弊社モデルは変わらずよく実測波形を再現しています。

EMCシミュレーション解析事例

2022.05.20

EMCシミュレーション解析事例を、図2に示すFET基板のノイズ解析事例を用い、表1の回路素子が No.1(理想回路モデル)・No.2(等価回路モデル)・No.3(FETモデルがデバイスメーカ提供モデルと弊社製モデルの場合)の3つの組合せについて、回路シミュレーションでモデル差異によるリンギング再現性を比較した場合と、更に基板3Dシミュレーションを用いてリンギング状態を可視化し適切な対策方法を導出した事例について解説します。

図2. FET回路解析
表1. 回路シミュレーションのデバイスモデル組合わせ

回路シミュレーションによるデバイスモデル比較

図2のFET回路において、表1のNo.1-3のデバイスモデル組合せによるFET ON/OFF波形を図3に示します。その結果、

  • 受動素子が理想回路モデルの場合は、FET OFF時のリンギングを再現できていません。
  •  メーカ提供FETモデルに比べて弊社製FETモデルのリンギングが大きく再現できています。
  • また、FETのターンオン/オフ時間(tr/tf)が弊社製FETモデルでは短く再現できています。

このように、EMCシミュレーションにとってデバイスモデルの特性再現性は大変重要です。 弊社はデバイスモデル専門ベンダーとして、良好なEMC解析用デバイスモデルの提供と合わせて、お客様のご要望に応じたEMCシミュレーション解析支援が可能です。

図3. 回路シミュレーション 時間-電圧波形 図3. 回路シミュレーション 時間-電圧波形

電磁界3Dシミュレーションによるリンギング原因解析

図4の基板電磁界3Dシミュレーションを実施し、図5のような結果が得られました。

リンギング周波数が30MHz(図5(b))でしたので、当該周波数の電界分布を可視化し、B面に配置された放熱パターンの共振(図6)が原因であることが判明しました。
よって、対策として図7で示す位置にスナバ回路を追加することにしました。

図4. 基板3D-過渡解析モデル 図4. 基板3D-過渡解析モデル
図5. (a)FET OFFリンギング時間波形/(b)基板3D/過渡解析スペクトル 図5. (a)FET OFFリンギング時間波形/(b)基板3D/過渡解析スペクトル
図6. 30MHz基板共振の様子 図6. 30MHz基板共振の様子

図7. 基板3D-過渡解析モデル 図7. 基板3D-過渡解析モデル

図8がその対策結果です。
リンギングがピタリと収まり、30MHzノイズスペクトルを完全に消すことができました。

図8. No.2モデルの対策前後比較 図8. No.2モデルの対策前後比較

まとめ

以上のように、電磁界3Dシミュレーションによってノイズの伝搬状態・共振の様子を可視化することで、原因の特定と、抵抗とコンデンサ各1個だけを追加するという低コストな対策を試作レスで実現することができました。

本事例は、FET素子が1個だけの単純な基板のEMC解析事例をご紹介しましたが、解析対象が車両規模であっても電磁界現象に変わりありません。

モーデックは、単にソルバーの操作方法やモデリングノウハウの支援に留まらず、電磁界の物理的現象から適切なEMC設計の仕方についてもサポートさせて頂きます。

簡易車両アンテナのFarーField解析事例

2022.05.20

自動車等の市販モデル1台の解析は大規模モデルとなります。
限られた解析資源(ワークステーション性能)と許容される解析時間の制約の中で、車両のEMC解析を実現するには車体モデル構造のリダクション手法を構築するなど、多くの課題があり、そのため数年間に渡る研究期間が必要になります。

モーデックは、実測と高い相関性を維持したまま車体モデルをリダクションする技術構築のためのアプローチ手法をご提供しております。 この手法は、有限要素法ソルバーのメッシュエラー回避・メモリ消費量の低減、およびFDTD法ソルバーのメッシュ数低減(*1)に寄与し、実測とシミュレーションを車両開発において実用的な相関性で実現します。

また、市販車両解析の前ステップとして、簡易構造の実機車両開発やパラメトリック解析が可能なシミュレーションモデルの開発支援を行っております。
図1は簡易構造車両モデルの事例です。 このモデル例では、31点の座標ポイントを代数で定義しており、お客様の手で希望される車両寸法のモデルを瞬時に作画可能であるとともに、特定の寸法を可変することで、アンテナ受信特性や車載ワイヤーハーネスとの電磁結合状態の変化等をパラメトリックに解析することができます。

以下に、本モデルを使ったガラスアンテナのFar-field指向性解析事例を紹介します。

*1) メッシュ数低減により、解析時間が短縮されるだけでなく、解析サイズの大型化や解析寸法の詳細化が可能になります。

図1. 簡易構造車両モデル 図1. 簡易構造車両モデル

図2は本モデルに採用したFMループアンテナの反射特性です。 国内/海外周波数帯で5dB以上のリターンロスがあるアンテナ特性としました。
この特性の合わせ込みは、アンテナ寸法の数か所をパラメトリック解析して求めました。

図3は、当該アンテナの80MHz(アンテナロス最大周波数)のE-fieldを示したものです。 本解析では実施してませんが、車室内の金属(シートなど)・リアガラスの設置されたデフロスターとの電磁結合状態を可視化することができ、従来のEMCエキスパートによる経験的アプローチから、シミュレーションによる定量的な可視化アプローチが可能となります。

80MHzにおけるアンテナのFar-field指向性を図4に、70-110MHzのFar-field指向性(φ=0°)を図5-1に、同じくFar-field指向性(θ=90°)を図5-2に示します。
実際のアンテナ受信性能は外部から平面波を照射しなければ適正な特性は解明できませんが、アンテナ配置による指向性変化や、車体構造による受信強度低下の様子を可視化することができます。

以上、 簡易車両モデルによるFMアンテナのFar-field解析事例を紹介しました。

モーデックは、”車両規模のEMC解析モデル構築” 、 ”簡易モデルによるパラメトリック解析” 等の技術構築とともに、開発現場にサステイナブルに定着可能な開発プロセス構築についてもご支援致します。

図2. FMアンテナ特性 図2. FMアンテナ特性
図3. E-filed@80MHz 図3. E-filed@80MHz
図4. Far-filed@80MHz 図4. Far-filed@80MHz
図5-1. Far-filed指向性(φ=0°)@70-110MHz 図5-1. Far-filed指向性(φ=0°)@70-110MHz
図5-2. Far-filed指向性(θ=90°)@70-110MHz 図5-2. Far-filed指向性(θ=90°)@70-110MHz

CISPRアンテナの解析事例

2022.05.20

CISPR試験などのEMC環境の解析を実施する場合、実際の測定に用いられるアンテナ等のテストコンポーネントの正確なシミュレーションモデルが必要となります。アンテナメーカーからは、試験に必要な特性データは提供されますが、シミュレーションに用いるための3Dモデルはほとんどの場合提供されておらず、自身で形状を入力し電気特性をチューニングして高精度なモデルを作成するには、多くの時間と労力を必要とします。
モーデックは、パラメトリック形状入力によるスピーディなモデル作成、動作原理に基づいた電気特性フィッティングおよび独自の給電ポート設定等により、電磁界シミュレーションに適した3Dアンテナモデルを提供いたします。

以下にCISPR試験に用いられる各種アンテナの3Dモデル解析事例をご紹介します。
1)バイコニカルアンテナ(30MHz-300MHz)
2)ログペリオディックアンテナ(200MHz-1GHz)
3)ホーンアンテナ(1GHz-6GHz)

2)ログペリオディックアンテナ(200MHz-1GHz)解析事例

図1にログペリオディックアンテナ(200MHz-1GHz)の3D解析モデルを示します。アンテナの物理形状は、データシートに記載の外形寸法に加えて実物を寸法測定したデータを用いることで、より正確なモデルを再現しています。
図2はアンテナの基本特性であるアンテナゲインについて実測値とシミュレーション値を比較した結果を示しています。アンテナの使用周波数帯において、実測とシミュレーションの良好な一致が得られています。
さらにアンテナ特性の一例として図3,4に500MHzにおける放射パターンおよび電界分布を示します。
このように電磁界解析を行うことでアンテナの放射指向性および空間の電磁波の様子を可視化することが可能になります。

図1. ログペリオディックアンテナ解析モデル 図1. ログペリオディックアンテナ解析モデル
図2. ゲイン特性 図2. ゲイン特性
図3. 放射パターン (500 MHz) 図3. 放射パターン (500 MHz)
図4. 電界分布 (500 MHz) 図4. 電界分布 (500 MHz)

1)バイコニカルアンテナ(30MHz-300MHz)解析事例
3)ホーンアンテナ(1GHz-6GHz)解析事例

EMC解析では測定周波数に応じてさらに各種アンテナの解析モデルが必要となります。アンテナ解析事例として図5-8にバイコニカルアンテナ(30MHz-300MHz)の、図9-12にホーンアンテナ(1GHz-6GHz)の解析モデル、ゲイン特性、放射パターンおよび電界分布を示します。
このように複雑な形状のアンテナについても関数カーブを用いた形状入力やパラメトリック数値解析により、正確な物理形状をサポートしつつ、電気特性においても高精度なフィッティングを可能としております。
以上、CISPRアンテナの解析事例を紹介しました。
上記以外にも様々な種類のアンテナモデル作成が可能です。EMC解析に必要なアンテナモデルのご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

図5. バイコニカルアンテナ解析モデル 図5. バイコニカルアンテナ解析モデル
図6. ゲイン特性 図6. ゲイン特性
図7. 放射パターン (100 MHz) 図7. 放射パターン (100 MHz)
図8. 電界分布 (100 MHz) 図8. 電界分布 (100 MHz)
図9. ホーンアンテナ解析モデル 図9. ホーンアンテナ解析モデル
図10. ゲイン特性 図10. ゲイン特性
図11. 放射パターン (2 GHz) 図11. 放射パターン (2 GHz)
図12. 電界分布 (3 GHz) 図12. 電界分布 (3 GHz)